キルアと幻影旅団
キルアはハンター試験の後、ゴンが修行を続けるために自分が犠牲になったり、ズシを助けたりするなど、順調にハンターとしての道を歩んでいました。
猫をかぶっている様子はありますが、無関係の人間をあっさり殺していたハンター試験の頃とは違い、彼なりにゴンと同じ「カタギ」になろうとしていたのです。
しかし自分より強い敵、つまり幻影旅団と対峙したとき、キルアはまたハンター試験の時と同様に己の弱さと向き合うことになります。
自分より強い敵と対峙する時
ゴンとキルアが幻影旅団に捕まった時、ゴンがフェイタンに殺されそうになります。
しかしキルアは後ろからヒソカに脅され、ゴンが危険でも動くことができませんでした。
甘かった…
オレがあの場面で動いたら ヒソカはためらわず オレを殺す気だった…
あの殺気……動けなかった…‼︎
もし…ゴンがあそこで致命傷を負わされかけたら…
そしたらオレは動けたかな…
(ハンターハンター 第10巻178頁)
キルアは、ゴンのために自分より強い敵に立ち向かえるかどうか、深く悩みます。
この後ノブナガに見張られ、逃げられない状況にあっても、ゴンの言葉も届かずそのことについて考えています。
イルミの言葉が頭の中を駆け巡り、自分には無理かもしれないという不安に襲われます。
オレがおとりになる
そのスキにお前だけでも逃げろ
(同上 191頁)
その結果、以上のようなキルアらしくない、非現実的な方法で逃げ出そうとしますが、そこには「自己犠牲によってゴンを助ける」というキルアの理想が読み取れます。
イルミの言う通りにはならないという抵抗でもあったでしょう。
友達のために、自分より強い敵と戦えるか?キルアは、自分の内面にその答えを求めていきます。
ハンター試験の後、キルアは自分より弱い敵を相手にした時や、自分が致命傷を負わない程度の自己犠牲なら進んで受けています。
しかし、イルミや幻影旅団など、絶対に敵わない相手と対峙した時、キルアは明らかに逃げ腰になり、友達であるゴンをも見捨ててしまいます。
友達を助けるためには自己犠牲をも厭わないゴンの側にいて、その自分の弱さをたびたび自覚することになるのです。
次の蟻編では、ビスケにキルアの欠点を指摘されます。
ここまでキルアの言動には一貫性があると考えられるので、ハンター試験でのイルミとの対峙が非常に重要なシーンであったことがわかりますね。
次回は、番外編として幻影旅団について少し書いてみたいと思います。
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