キルアの最終試験
前回の記事で考えた、ゴンとキルアの違いが最終試験で明確に表れるので、途中の試験は飛ばして読んでいきます。
1、ハンターの資質
ハンターになるための最終試験で、ハンターの資質が問われます。
会長のネテロが、それまでの試験結果から最終試験で戦う順番を決めました。
そこで有利となったハンターの資質について以下のように言っています。
ネテロ「重要なのは印象値!
これは すなはち前に挙げた値でははかれない"何か"!!
いうなればハンターの資質評価といったところか」
キルア「試験の結果ならオレの方が上のはず…!!
資質でオレがゴンに劣っている!?」
(ハンターハンター第4巻 132,133頁)
ここでキルアは、ハンターの資質に実力以外のものがあることに気付きます。
しかしキルアはゴンよりも自分の方が上だと思っていたため、ゴンとハンゾーとの戦いで実力は自分の方が上であることを確認します。
それでもゴンがハンゾーをあのわがまま理論で押し始めると、キルアは以下のように感じています。
キルア「なんだよ…!?
現状は何も変わってない!!
ゴンがあいつより強くなったわけでも 折れた腕がくっついたわけでもなんでもない!!
なのに なんでさっきまでのあの殺伐とした空気が 一瞬にしてこんなにゆるんじまうんだ!?
(同上 156頁)
実力差が全てだと思っていたキルアにとって、ゴンの強さは理解しがたいものでした。
このあたりのセリフは、ゴンの強さをキルアが説明するという役割もありますが、この後のキルアの行動にも繋がる重要な場面でもあります。
ゴンとハンゾーの戦いで、ますますキルアは混乱していき、自分に何が足りないのかわからなくなっていきます。
なぜゴンがハンゾーにまいったと言わせることができたのか、以下のように本人に直接尋ねています。
キルア「なんでわざと負けたの?」
ハンゾー「……わざと?」
「殺さず「まいった」と言わせる方法くらい心得ているはずだろ あんたならさ」
(中略)
ハンゾー「気に入っちまったんだあいつが あえて敗因をあげるならそんなとこだ」
(同上 177、178頁)
実力差ではなく、気にいるか気に入らないかで負けを認めるなんて、キルアがそれまで生きてきた世界では考えられないことです。
前回の記事で書いた、ゴンとキルアの違いはまさにそこにありました。
キルアは、ハンターとしての資質でゴンに劣っていたのです。
それでは、ハンターの資質とは具体的に何を指すのでしょうか?
2、印象値の正体
キルアの次の展開へ進む前に、キルアがゴンとの差を痛感することになった「印象値」について、私なりに考えたことをまとめます。
印象値とは、前回の記事で書いたようなゴンの「自分を犠牲にしてまで友達を助ける」ところや、「絶対に信念を曲げない」ところ、そして「周囲の人間の想像を上回る言動」など、言葉では説明しにくいような特徴が挙げられると思います。
そしてその印象値は、ハンターハンターの世界で言うところの「ハンターの資質」に置きかえられています。
このゴンの印象値について、実は作品の中に根拠がありません。つまりゴンが一体どうやってこのような考え方を身に着けたのか、説明がないのです。
というのも、ハンターハンターの主要な登場人物は、その生い立ちが性格にとてもよく反映しています。
特にキルアやクラピカは幼い頃の様子も描かれているので、なぜこのような性格で、ものの考え方をするのかがだいたいの根拠をもって示されています。
その説明がほとんどないゴンやレオリオの印象値については、まさに生まれ持った、ゴンの場合は父親から受け継いだ「ハンターの資質」だったのではないでしょうか。
3、主人公っぽさの表現
この印象値について、私は「ジャンプの主人公っぽさ」を冨樫さんが漫画の中で値にしたものではないかと考えます。
ドラゴンボールの悟空や、幽遊白書の幽助など、人気漫画の主人公はどことなく性格が似ています。
猪突猛進で、友達思い、努力を惜しまない、戦うのが好きなど、少年ジャンプが三大原則として掲げている「友情、努力、勝利」にも当てはまります。
そういった読者が主人公に感じる「何か」を、印象値やハンターの資質という言葉で説明したのではないでしょうか。
以上のようなハンターの資質でキルアはゴンより劣っていたと言えるのですが、その正体がはっきりと掴めないまま、キルアは最悪の敵と対峙することになります。
次回は、キルアとその兄、イルミとの戦いで描かれた、キルアの心の中について考えていきます。
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