ハンターハンター 作者のインタビューから
冨樫さんがどのようにハンターハンター を描いているのか知るために、インタビューなどを確認していきます。
1、キャラクターらしさを追求する
以下は「少年ジャンプ+」に掲載された「冨樫義博×石田スイ 特別対談」での冨樫さんの発言です。
キャラクターをコントロールできていない時の方が、漫画は面白くなりますよね。漫画を描く時は、最初におおよそのストーリーを考えているんです。でも実際にキャラクターを描きだすと、そのストーリーラインとはまったく違うセリフをしゃべっちゃうことがあって、そのセリフが「こいつに合ってる!」と思うと、最初に考えていたストーリーは捨てるしかないんです。でも、そういうことが起きた時の方が面白いですよ、やっぱり。(http://www.shonenjump.com/p/sp/1606/hyskoa/talk_3.html 2018年1月13日閲覧)
ここでは、最初に考えていたストーリーラインとは違う台詞を、キャラクターが勝手にしゃべりだすような言い方をしており、しかもその台詞がキャラクターに合っていると思うとストーリーよりもそのキャラクターらしさを優先するという考え方がわかります。
キャラクターをコントロールできていないときの方が漫画がおもしろくなるとまで言っているので、キャラクターの性格を正確に描くことを重視しており、作者の経験上ではそれもストーリーにいい影響を与えると考えているのではないでしょうか。
2、作者の「勘」
上記のインタビューでは石田スイさんが描かれたヒソカの過去編について語られていますが、やはり作者自身もヒソカに対しては思い入れがあるようで、相当なお気に入りのようです。
34巻の巻末に掲載された「クロロVSヒソカ解説」では、作者がやりたかったことは主人公の敵同士の戦い、旅団を殺させること、そしてカキンの船への流れに旅団を繋げることだったと書かれています。
しかし、最後にヒソカが誰を殺すかは決まっておらず、ヒソカはマチを殺したがっていたが、マチを生かしておいたのは「後々面白くなるという予感」があったからということでした。
ヒソカの言動にそのキャラクターらしさを忠実に表現していて、時にはストーリーよりも優先されることがあると先ほどのインタビューでは述べられていましたが、巻末の解説ではそこに作者の「勘」が介入したことがわかります。
それがストーリー上しかたなく、キャラクターの行動を制限するというのなら意味が理解しやすいのですが、後々おもしろくなりそうという作者の勘である場合、その選択の意図は作者にしかわかりません。
それがわかるのが、先ほどのインタビューのはじめの方で石田スイさんが、ヒソカの台詞の後ろについているトランプのマークをすべて確認し、一定の傾向があることを指摘した上で、マークに何か意図があるのか冨樫さんに尋ねたところです。
冨樫さんは、それは勘だが、そういう傾向があるかもしれないと答えています。
そういった細かいところに作者の意図があるのではないかという石田さんの予想はごく当たり前のものですが、それは作者の「勘」であるということがわかります。
3、読者の予想を裏切る
私は冨樫さんがハンターハンターを描いている時に編集を担当していた方のお話を聞いたことがあるのですが、その方いわく、自分の意見は世間一般の人が考える事として参考にされるのみで、自分の提案をなるほどと聞いてくれるわりには、一切採用されることはないとおっしゃっていました。
この話は読者としてすごくおもしろいけれども、あまり驚く話ではないですよね。むしろ、まあそうだろうな~と思ってしまいます。
つまり、作者は読者の予想通りの展開を避けているのです。これもストーリーに大きく影響していると考えられます。
ハンターハンターを読むにあたって
- キャラクターの性格が言動に反映されており、時にはストーリーラインよりも重視される。
- 上記に対して、作者の「勘」でキャラクターの言動が変わることもある。
- 読者の期待を裏切るストーリー展開を目指している。
この3点が特徴として挙げられると考えます。
しかしここからわかるのは、非常に「やりにくい」作品だということです。
わかりにくいからこそおもしろいのですが、丁寧に読もうとするととたんに難しくなる作品だと言えるでしょう。
以上のことをふまえて、次回からは、ヒソカ・・・ではなくキルアについて考えていきたいと思います。
そういえばここまでまったくキルアについて触れていませんが、作者はヒソカに限定せず漫画を書く際の自分なりの考え方として語っているので、以上のようなことがヒソカ以外の主要な登場人物にも当てはまると考えられます。